こっそり比較シリーズの第2弾です。下記の第1弾もご覧下さい。
なぜ「こっそり」なのかというと、比較するリグの年代やコンセプトが大きく異なるため、比較することにあまり意味をなさないからです。
今回は1987年発売のケンウッドの「TS-680V」と、2016年発売の八重洲無線の「FT-991A」で、これらのリグの発売時期は実に約30年の隔たりがあります。
下記でも似たような比較をしていますが、下記は性能というより移動運用での使い勝手を考察しています。一方、この記事は受信の比較になります。
ここでは7MHz帯の受信について、普段あまり運用しないSSBは音質の比較のみ、CWは音質に加えて受信感度について軽く比較しました。
測定器も何もないので私の耳による比較ですので、先入観が入っていることは否めませんが、まあその程度の比較だということで参考程度に・・・(^^;)。
同じアンテナを同軸切替器でそれぞれのリグへ
公平さを保つため、既設のダイポールアンテナのひとつを同軸切替器で切り替えてそれぞれにリグに接続し、切り替えて聴き比べるという方法です。
(度重なる切替器の操作で、指先がマヒしました・・・^^;)
同軸切替器は第一電波工業の「CX210A」を使用。デスクの裏側に設置(メンテナンス性最悪^^;)してあるため、同軸切替器の配線の部分は写真を撮ることができませんでした・・・。
SSBの受信音(内蔵スピーカー)
まずはSSBの内蔵スピーカーの受信音から。
再開局直後はTS-680VでSSBばかり運用していましたので、TS-680VのSSBの音はよく分かっています(いるつもりです)。
TS-680Vは表現が難しいですが「艶があり透き通っている音」といったところでしょうか。
個人的には懐かしさのある音ですが、聴いていて疲れないというか、心地よい音です。さすがはオーディオで培われたケンウッド(トリオ)ブランドの音へのこだわりかな?という感じです。
以前はこのリグでSSBを運用していたので、聴き慣れているということもありますが・・・。
ただノイズも目立つ感じです。
一方、大差は感じられないものの、FT-991AはTS-680Vほどの音に艶がない感じで、少し音がこもった感じがしました。あえて表現するならば「違和感のない普通の音」といったところですが、これは好みの分かれるところかもしれません。
ノイズは抑えられている感じです。
ただこれについてはスピーカーの特性の影響も受けるので、そのあたりは考慮が必要です。
(スピーカーの径は見た目ではほぼ同じです)
SSBの受信音(イヤホン)
・・・ということで、スピーカーに影響されない同一のイヤホンで聴き比べました。
イヤホンの場合でも、音の傾向は内蔵スピーカーの場合と同様でしたが、いずれもスピーカーよりも固い音に感じました。強いて言えば、FT-991Aの方が固さが弱い感じがしました。
イヤホンが1,000円程度の安物(^^;)ですので、その性能が影響しているともいえます。さすがにもう少し高価なイヤホンやヘッドホンを使わないとダメですね。
(無線通信用のヘッドホンが欲しい今日この頃)
CWの受信音(内蔵スピーカー)
続いてCWの場合です。こちらは内蔵スピーカーのみでの聴き比べです。
まずは公平性を保つため、CWピッチをいずれも800Hzに設定しました。実は私の好みは600Hzなのですが、TS-680Vが800Hz固定で変更不可となっていますので。
また直接的な影響はないでしょうが、CWのモードもFT-991AはいわゆるC-U(BFOが周波数の低い側にある)にセットしました。これもTS-680V(CWリバースがない)に合わせるためです。
結果的にはこちらの記事の「受信音(CW)」のところに書いたものと同じ印象で、かつTS-680Vの方が「音が透き通っている」感じはSSBと同じで、むしろCWの方がその差は顕著です。
・・・こう書くと相当な差のように誤解を与えますが、ほとんど変わらないレベルです(^^;)。
余談ですが、過去に使っていた(あえてメーカー名は出しませんが)往年の小型のオールインワンのリグで、CWの受信音とサイドトーン音がいまいちな機種がありました。
CWの受信感度
あくまでも私の耳で聴いた感想です。測定器で測定した訳ではありませんのでご了承下さい。
いずれも、強い電波はもちろんのこと弱い電波も明瞭に受信します(当然!)。シグナルメーターの振れ具合もほとんど同じで、私の耳程度ではほぼ差が感じられないといったところです。
メーカーによってシグナルメーターの振れ具合が異なるケースもあるようですが、弱い電波も含めほぼ同じ振れ幅でした。
ただTS-680Vはノイズが目立つため、了解度が低いイメージです。
一方、ノイズに埋もれそうなきわめて微弱な信号についても同等でしたが、驚いたことにFT-991Aではほぼ認識できない信号が、TS-680Vではぎりぎりのところでノイズに埋もれながらも信号が認識できたという場面がありました。
ただ、フェージングが強い状況でもあったので、必ずしも公平な確認ができているとは言えない部分もあります。またスピーカーの特性など他の要素もありますので、ヘッドホンなどを使って、もう少し複数の微弱な信号でのチェックが必要かと思います。
このレベルになると、いずれにしても内容は認識できないので、あまりこだわっても意味がないですが・・・。
なお、FT-991Aはデジタル処理の調整で信号を浮かび上がらせることも可能です。これこそが近年のリグの強みで真価の問われるところでしょうが、ここではそこまでは行っていません。
CWフィルタの効果
続いてCWフィルタの効果の比較です。
TS-680Vはケンウッド純正の帯域幅500Hzのクリスタルフィルタ「YG-455C-1」、FT-991Aは搭載されたIF-DSPによるデジタルフィルタになります。
FT-991Aは帯域幅50Hz~2.4KHzを可変できますがここは500Hzにセットしました。
タイミングよく山口コンテストが開催されていて、7,012.00kHzとその300Hz上の7,012.30kHzでわりと強いCQ局が同時に入感していました。(300Hz離れています)
周波数を7,012.00kHzに合わせフィルタをONにし、その効果を確認しました。
コンテストが開催されていて、聴き比べには
ナイスなタイミングでした。
結果ははっきりと出ました。
TS-680Vの方は300Hz上の信号がピーピーと高い音となって混信していたのに対し、FT-991Aは「スパッ」と切った感じで混信がまったくない状態でした。さすがのデジタル処理!
単純な比較ではこのような状況でした。
ただし、両者には物理的なフィルターとデジタル処理という大きな違いがありますので、特性の違いも考えられ、一律の比較は少々無理があるかもしれません。
ちなみにTS-680Vは、この状態でIF-SHIFTを調整することで、完全に混信はなくなりました。
メインダイヤルの周波数変化量
受信の比較には直接関係ないのですが、CWモードでの周波数を変更するメインダイヤル(VFO)の回転量と周波数変化量が気になりました。
TS-680Vは1回転で10kHz変化するのに対し、FT-991Aはノーマルで1kHzでFASTモードにすると20kHz変化するという設定です。
TS-680Vは微調整には少し変化量が大きいですが、大きく周波数を動かす時には程よい感じです。やはりFT-991Aのように2段階になっていると使いやすいですね。
結論(というほどのものではないですが)
ということで比較をしましたが、あまりにかけ離れたリグなので、現実的にはほぼ参考にならないと思います。読み物として楽しんでいただければと思います。
あくまでも個人的な感想ですが、ケンウッドは音がいい(というかオーディオメーカーとしてのこだわりがある)のかな?という印象が強く残りました。
ケンウッドのリグもラインナップが少なくなってしまいました。小型のHF~430MHzまでオールモードで運用できるリグの登場を期待しています!
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